外国人労働者たちの実話をもとに描く圧巻のリアリズム。
外国人労働者たちの実話をもとに描く圧巻のリアリズム。
在日ミャンマー人の移民問題と家族の愛を描いた前作『僕の帰る場所』が、東京国際映画祭「アジアの未来部門」グランプリを受賞した藤元明緒監督の最新作。臨場感あふれる役者の演技によるドキュメンタリーとフィクションを越境するスタイルは本作でも健在だ。

近年、外国人技能実習生にまつわる劣悪な労働環境などが社会問題として注目されているなか、本作は藤元監督が実際に技能実習生から受け取ったSOSメールをきっかけにして着想された。世界第4位の移民大国となった日本で暮らす私たちにとって、国境を越え出稼ぎに来た女性たちの覚悟と生き様が、他人事ではない物語として心に迫る。

また、本作は海外でも評価が高く、世界でも有数の若手監督の登竜門であるサンセバスチャン国際映画祭・新人監督部門に選出され、"映画祭が支援していきたい逸材"と評された。
技能実習生として来日した若きベトナム人女性のアンとニューとフォンはある夜、搾取されていた職場から力を合わして脱走を図る。新たな職を斡旋するブローカーを頼りに、辿り着いた場所は雪深い港町。やがては不法滞在となる身に不安が募るも、故郷にいる家族のためにも懸命に働き始める。しかし、安定した稼ぎ口を手に入れた矢先にフォンが体調を壊し倒れてしまう。アンとニューは満足に仕事ができないフォンを心配して、身分証が無いままに病院に連れて行くが——。
脚本/監督/編集:藤元明緒
1988年生、大阪府出身。ビジュアルアーツ専門学校大阪で映像制作を学ぶ。日本に住むあるミャンマー人家族の物語を描いた長編初監督作『僕の帰る場所』(18/日本=ミャンマー) が、第30回東京国際映画祭「アジアの未来」部門2冠など受賞を重ね、33の国際映画祭で上映される。長編二本目となる『海辺の彼女たち』(20/日本=ベトナム)が、国際的な登竜門として知られる第68回サンセバスチャン国際映画祭の新人監督部門に選出された。現在、アジアを中心に劇映画やドキュメンタリーなどの制作活動を行っている。
撮影監督:岸建太朗
1973年生、東京都出身。劇作家宮沢章夫氏に師事し俳優として活動する傍ら、02年より映像制作を開始。監督作『未来の記録』(11公開/脚本・監督・撮影・編集)がSKIPCITYDシネマ国際映画祭、トリノ国際映画祭、TAMA NEWWAVEなどで上映、受賞した他、短編『Hammock』(20/撮影・脚本・監督)が、大阪アジアン映画祭にて芳泉短編賞を獲得。映画やTVドラマ、CMなどの撮影監督としても活動しており、藤元監督とは『僕の帰る場所』『白骨街道』に続き三本目のタッグとなる。撮影作品として『解放区』(14/監督:太田信吾)『Noise』(18/監督:松本優作)『種をまく人』(16/監督:竹内洋介)『れいわ新撰組」(19/監督:原一男)、『鈴木さん』(20/監督:佐々木想) など。
音響:弥栄裕樹
1976年生、大阪府出身。1999 年頃より関西アンダーグラウンドのバンドシーンで創作活動開始。紆余曲折を経て録音技師・音響効果・ミキサーとして幅広く活動。様々な場所でフィールドレコーディングを行い、録りためた音源を映画や音響作品に展開したスタイルが特徴。フィールドレコーディングや同録素材などとコラージュしたサントラ「Dreaming in Manga-jima」をミュージックコンクレート作品として制作。参加作品として『すずしい木陰』 (20/守屋文雄監督)『れいこいるか』(20/いまおかしんじ監督)『ソワレ』(20/監督:外山文治)『さくら』(20/監督:矢崎仁司)『愛のまなざしを』(20/監督:万田邦敏)『犬部!』(21公開予定/監督:篠原哲雄)など。
プロデューサー:渡邉一孝
1986年生、福井県出身。配給会社、俳優事務所、映画祭のスタッフを経て、日英翻訳のコーディネートや映像字幕制作、自主映画の制作を行う。2014年に映画の企画から配給/セールス及び翻訳字幕制作を行う株式会社E.x.N (エクスン)を設立。製作/プロデュース作として『黒い暴動♥』(16/監督:宇賀那健一)、藤元明緒監督作『僕の帰る場所』(17/日本=ミャンマー)、短編『白骨街道』(20/日本=ミャンマー)。山形国際ドキュメンタリー映画祭ラフカット!部門のプログラムコーディネーター。映像を観て対話する「見たことないモノを観てみる会」を主宰。
プロデューサー:ジョシュ・レヴィ
1985年生、カリフォルニア出身。ディズニーやフォックスにて制作現場での経験を得る。ベトナムに移住後、2016年に、現地の映画監督たちと共に映画会社・エヴァーローリングフィルムズをハノイで立ち上げる。短編映画『Roommate』(18/監督: Nguyen Le Hoang VIET)がハノイ国際映画祭にて新人監督賞を受賞。Produire Au Sud(ナント国際映画祭)、SEAFIC、SGIFF Southeast Asian Film Lab, Full Circle Lab、Online Consultancy(ロカルノ映画祭)などのプログラムに参加。現在『Till the Cave Fills』『Fix Anything』など国際共同製作長編企画を企画開発中。
フォン役:ホアン・フォン
1995年生、ハノイ在住。15歳まで実家の農家で暮らし、22歳で役者を志しハノイに上京。演技を独学で勉強し、演技経験が少ないながら、今作ではベトナムでのオーディションを通じて、主役に抜擢された。同じく主演した映画『Invisible Love』(20/中国/監督:Xiang Guo)では、パリ国際映画祭2021にて俳優賞を受賞するなど、国際的な活躍が期待される。
アン役:フィン・トゥエ・アン
1995年生、ホーチミン在住。ベトナム国内のインディーズ映画やMVなどに多数出演する俳優/モデル。ファン・ダン・ジー監督が主催するベトナムやアジアの若手映画人を育成するワークショップ「オータム・ミーティング」に2018年に俳優として選出される。主な出演作として『My Mr. Wife』(18/監督:Charlie Nguyen)『Fight back to School』(18/監督:Duy Joseph)など。
ニュー役:クィン・ニュー
1994年生、ホーチミン在住。ファッションモデルとしてベトナム国内で活躍中。2019年6月にベトナム(ハノイ、ホーチミン)にて行われた本企画の主演キャストオーディションに応募。演技未経験ながら、ホアン・フォン、フィン・トゥエ・アンと共に抜擢された。本作が映画初出演。
脚本•監督•編集:藤元明緒
出演: ホアン・フォン、フィン・トゥエ・アン、クィン・ニュー 他
撮影監督:岸建太朗 / 音響:弥栄裕樹 / 録音:keefar / フォーカス: 小菅雄貴 / 助監督・制作: 島田雄史 / 演出補: 香月綾 / DIT: 田中健太 / カラリスト:星子駿光 / アソシエイトプロデューサー: キタガワユウキ / プロデューサー: 渡邉一孝、ジョシュ・レヴィ、ヌエン・ル・ハン / 協賛:坂和総合法律事務所、株式会社ビヨンドスタンダード、⻑崎⼤学多⽂化社会学部 / 協⼒:外ヶ浜町、平舘観光協会、⽇越ともいき⽀援会、⽇本ミャンマーメディア⽂化協会 / 後援:国際機関⽇本アセアンセンター / 共同制作会社:ever rolling films / 企画•製作•配給:株式会社E.x.N / 宣伝:高田理沙
(2020/⽇本=ベトナム/88 分/カラー/5.1ch/1:1.85/ベトナム語・⽇本語/ドラマ/DCP) ©2020 E.x.N K.K. / ever rolling films
順不同・敬称略
憐れみ深い物語。全ての心に響くことを望みます。
セミフ・カプランオール
映画監督(『蜂蜜』『グレイン』)
暗闇から、音が聞こえる。
音が静かに暗い冬の街に溶けてゆく。
波の音、風の音、ストーブの音、
異国からやってきて、迷うまいと彷徨う女性達の雪を鳴らす足音、彼女たちの吐息。
音が、世界の一部となって溶けてゆく。
この世界に形を変えて残り続ける格差という奴隷制度。
彼女たちは労働者ではない、ただ生きている。海辺の彼女たちは、それぞれが人生の少ない選択肢の中から最善を選んで日本で暮らしている。この同じ空の下で長い間放置される現実に、胸がはち切れそうになる。
事実とリアリズムに徹しきり、硬い意志をもった意義深いこの作品を世に送り出す監督スタッフ、そして海辺の彼女たちに、心からの拍手と祝福を贈りたい。
池松壮亮
俳優
彼女達はどうしてそこにいるんだろう。どうしてこんなにも真っ直ぐなのだろう。弟の進学を夢見る姉、親に楽をさせたいと願う娘。その願いを消費する仕組みを作っているのは紛れもなく日本社会だった。彼女達があなたの姉だったら、娘だったら、人として扱われ、自分を生きて欲しいと願うだろう。真摯に彼女達と向き合わせてくれるこの映画に感謝する。
伊藤詩織
映像ジャーナリスト
ほぼ毎日商店街の鮮魚屋やスーパーで、安くて美味しそうな魚があるかなと見に行く。特価品や お買い得! というシールに胸踊りながら、その安さがなにを物語りえるか、考えたことはなかっ た。市場から仕入れられ、店頭に並ぶ魚貝は、彼女たちによって仕分けられたのではないか?ふっとそんな可能性を思った。北の場所が彼女たちに与える現実は、日本のいち部分の出来事、ではない。あの現実は、私の現実に確かに繋がっている。無数の、このような繋がりこそが表しているものはなにか。わたしが住む国/我々が身を置く共同体。カメラが4人目の「彼女たち」となり、観る者と共振する。「彼女たち」は名無しではない。フォンさん、アンさん、ニューさん、そして藤元明緒さんとスタッフの人たちが協働して生んだ『海辺の彼女たち』という眼差し。ひとつづきの現実に、観客の我々も生きている。
小田香
映画作家
窮地に立たされた彼女たちは、前に進む足を止めない。
遠く離れた地で、家族を想い、将来を語り、肩を抱き合い、彷徨いながらも、ギリギリに乗り込む電車やフェリー。

岐路に直面した彼女たちの行く先は、社会の向かう方向によって左右され、私たちの住む町にたどり着く。病院で、バス停で、道端ですれ違う誰かなのかも知れない。隣に乗り合わせたような、そんな感覚と共に彼女たちの物語に入っていく。生命の熱を感じる映画。
戸田ひかる
ドキュメンタリー映画監督
映画の中の彼女達は、その後もあの漁港で働き続けているかのような実在感を持っていた。
人の弱さも強さも真っ直ぐに描いているこの映画を、何かの線を引かないで観てほしい。
「社会派映画」という言葉では言い切れない、本質的な人間の姿がそこには映っている。
福永壮志
映画監督
台本のないドキュメンタリーこそリアルだ、と思う。
けれど、人はカメラを向けられた瞬間に通常の振る舞いを奪われる。
フィクションでしかリアルは映し出せない、とも思う。
しかし、その物語は嘘である。
この映画は、そのちょうど間にあった。
3人のベトナム人女性はこのスクリーンの中で、”ありえたもう一つの人生”を歩んでいる。
希望を抱いて越えた海の激しさも、雪の冷たさも、魚の生臭さも、全て現実として3人を刺している。
そして、現代の奴隷制とも揶揄されるグロテスクな技能実習制度に取り込まれた同郷の者たちの悲しみもまた、3人を刺している。
だからこの映画には、紛れもない真実の一つが映し出されている。
あなたが嬉々として嵌めている婚約指輪のデカいダイヤモンドは、アフリカ人の家族をまるごとひとつ殺してから日本に来たものかもしれない。
あなたがよだれを垂らして頬張る旨そうな牡蠣は、心ない日本人による搾取の渦中でベトナム人が涙を流し梱包したものかもしれない。

つまりこれは、あなたの物語なんだ。
上出遼平
テレビ東京・ディレクター
出稼ぎのベトナム女性3人。本当に日本か、と思うほどの現実の惨さに途方に暮れると同時に、安っぽい優しさが吹き飛ぶくらいの彼女たちの決断に人間の強さを見る。そしてその姿が藤元監督・渡邉プロデューサーの二人とダブる。日本に住む外国人の陽の当たらない物語を無名のキャストで描いて2本。誰かに責任を押し付けるのではなく、僕たちはどう生きるのかと問い続けている。彼らが映画を撮り、上映され続けていく事が、社会の多様性に繋がっていくと信じている。
大槻貴宏
ポレポレ東中野代表
我々が日ごろ知ろうとしない「もうひとつの日本」の姿がここにある。移民の受難を世界の映画が語る中、藤元監督も広い視野で日本を見つめ、観客の目を覚まさせてくれる。監督の視線は客観的で冷徹なものでなく、あくまで「我がこと」として、熱く真摯な姿勢で主人公に寄り添う。映画内世界は冬だが、本作が持つ熱情のリアリズム演出は観客の胸を焦がすだろう。藤元監督が世界を舞台に活躍する才能であることを証明する傑作だ。
矢田部吉彦
この映画は、技能実習制度の問題点を提示しつつ、来日した若い女性たちが遭遇する過酷な暮らしを描いています。それは私が保護してきた元技能実習生が遭遇したある現実でもありました。映画を通じて、日本に働きに来た外国人は単なる労働力ではなく一人の労働者なのだということを今一度感じさせられます。
吉水慈豊
NPO法人日越ともいき支援会代表
目の前に二つの選択肢さえあれば、人は自由だと言えるのだろうか。どちらも選び得ない分かれ道の前に立ったとき、人は自由だと言えるのだろうか。そもそもなぜ彼女たちは日本で働き、日本で苦しんでいるのだろう。そうしたかったから?そうせざるを得なかったから?物語はラストの分かれ道へと私たちを連れていく。だが本当にはラストシーンではないのだ。そこで終わらない現実の苦みを、藤元監督はとらえようとした。彼女の人生は続く。
望月優大
ニッポン複雑紀行編集長
「技能実習生」という名のブラック労働が一部で取り沙汰される日本。異国の地で働くベトナム人女性3人の姿を通して、彼女たちの心の世界が生々しく浮き彫りにされる。「技能実習生」の実態を描くレポートとは真逆に、彼女たちの目線に焦点を当てながら、フォン、アン、ニューそれぞれの内面に伴走する映像には、『僕の帰る場所』に続く藤元明緒監督の日本を含めたアジアへの優しく鋭い視線が注がれ、見る者の心を惹きつける。
村山匡一郎
映画評論家
素晴らしいカメラ、才能あふれる繊細な三人の女優、そして献身的な監督によって作られた『海辺の彼女たち』は、日本の郊外であまり出会うことのない人物たちの人生を間近で追う事へと誘ってくれる。藤元監督の2作目は、日本に対するユニークな視点を持つ素晴らしい才能であることの証明だ。今作は視る楽しさがある。必見だ。
イザベル・グラチャント
エイジアンシャドウズ(セールス会社)
ストイックで誠実さのある映像のスタイルで、メロドラマ的な要素やステレオタイプな設定を一切避けた『海辺の彼女たち』は、心揺れるラストシーンへと向かう強烈で実直な旅だ。ラストシーンは、日本の移民労働者の生活を最も効果的に日常の些細な動作で描いている。
ロベルト・クエト
サンセバスチャン国際映画祭
ドキュドラマのような映像に心を掴まれる
ジャパンタイムズ
彼女たちの勇気と決意に捧げた厳かで美しい詩
米・ハリウッドレポーター誌
クリスティアン・ムンジウ監督の傑作『4ヶ月、3週と2日』を彷彿とさせる。
マギー・リー /バラエティ誌・アジア映画批評チーフ
殺人のないスリラー
ピーター・ポール・ヒュース/批評家
日本は自国のケン・ローチ監督を見つけたのかもしれない
サイコシネマトグラフィー
目の覚めるようなリアリズムと映画ではあまり映されない被写体に対するヒューマニズムが描かれている。ナチュラルでドキュメンタリーのようなスタイルが強烈だ。
キキ・フォン/香港国際映画祭